【税金】ビットコインと雑所得〜株・FXより厄介な税金

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  • 雑所得の特徴と,仮想通貨の税金についての備忘録.
  • 仮想通貨での「商品の買い物」や「別の仮想通貨の購入」も課税対象となる.
  • 仮想通貨にかかる雑所得は累進課税であり,給与や利益が大きいと(株式やFXに比べ)税率が高くなる.

今年,ビットコインで得られた利益が「雑所得」であると明言されたことは記憶に新しいと思います.また,最近

  • 『値上がりしたビットコインで「買い物」をした際にも税金が発生する』
  • 『値上がりしたビットコインで「別の仮想通貨を購入」した際にも税金が発生する』(※ この場合は「含み益」の状態でも課税対象!)

ことなども公になりました.そして課税の対象となる場合は,

  • 自分で「所得税」や「住民税」の申告が必要(※ 雑所得が20万円以下でも「住民税」の申告は必要)

となります.


従って,ビットコインを扱うには以下が欠かせません.結構敷居が高いですね:

ビットコインを扱う際に必要なこと
  1. 「買い物」,「他の仮想通貨の購入」を含めた売買について全て記録されていることが必要
  2. 所得税・住民税を自分で申告する必要がある
※ 税金の扱いが面倒だからと言って,利益確定しなければいつか暴落する可能性も!

以上のことだけではなく,ビットコインの利益である「雑所得」にかかる税金は,制度上とても「嫌」な物なのです.

仮想通貨と雑所得

まずは,仮想通貨に適用される税制についてまとめてみましょう.

これまで公になった情報

国税庁から正式な発表があるたびにニュースになっていますね.
これらの内容をざっと整理しておきましょう.

情報源・概要
2017/04/01 No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係|国税庁
  • ビットコインを使用したことによる損益は,原則として「雑所得
2017/12/01 仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)
  1. 仮想通貨を日本円に換金した場合の所得:
        (所得金額) = (売却価額) - (取得価額)
  2. 仮想通貨で商品を購入した場合の所得:
        (所得金額) = [商品価額 (消費税込み)] - (取得価額)
  3. 仮想通貨で別の仮想通貨を購入した場合の所得:
        (所得金額) = [(購入する仮想通貨の) 購入価額)] - [(支払いに使う) 仮想通貨の取得価額]
        ※円換算して計算
  4. 仮想通貨の取得価額の計算法
  5. 仮想通貨の分裂による所得:
        分裂時点では新たな所得は生じない (分裂により取得した仮想通貨の取得価額は0円)
  6. 仮想通貨による損益が「雑所得」以外の区分になる例
  7. 雑所得の損失は,雑所得以外の所得と通算不可
  8. 仮想通貨の証拠金取引による所得は、総合課税 (申告分離課税の適用は無い)
  9. 仮想通貨をマイニングで取得した場合の所得:
        (所得金額) = (収入金額) - (必要経費)
        ※売却・使用時に用いる取得価額は,マイニング時の時価
2018/04/01 No.1525 仮想通貨交換業者から仮想通貨に代えて金銭の補償を受けた場合|国税庁
  • 非課税となる損害賠償金には該当せず、雑所得として課税の対象となる.
  • 損失が生じた場合は,他の雑所得の金額と通算することができる.

仮想通貨の税金はここがイヤ

  1. 基本的にはには総合課税が適用される(後述).
    • 累進課税のため,所得が上がると税率も上がってしまいます.
    • 給与所得も合算されて税率が決まります.
    • 株式やFXでは,利益が増えても税率は一定です.申告分離課税のため,給与所得とも無関係です.
  2. 雑所得以外の他の所得と損益通算ができない.
  3. 損失の繰越ができない.
  4. 「給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額」が20万円以下なら確定申告不要.
    しかし,住民税の申告は必要
    • これは,「雑所得」特有のことではありませんが,一応挙げておきます.
    • つまり,「ビットコインによる利益が20万円以下だから何もしなくて良い」は間違いです.
    • 「確定申告」とは,所得税に関して行うものです.つまり,「住民税」には言及してないわけですね.
    • 株式の場合は「特定口座・源泉徴収あり」で取引をすれば,20万円以上の利益でも確定申告は不要です.


仮想通貨以外の雑所得

次に,仮想通貨以外の雑所得も含めて比較してみましょう.

雑所得とは

そもそも,「雑所得」とは何なのでしょうか.国税庁は以下のように説明しています:

雑所得

雑所得とは、他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得をいい、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当します。

No.1500 雑所得|所得税|国税庁

ここで,「9種類の所得」とは

1. 利子所得, 2. 配当所得, 3. 不動産所得, 4. 事業所得, 5. 給与所得, 6. 退職所得, 7. 山林所得, 8. 譲渡所得, 9. 一時所得

のことです(No.1300 所得の区分のあらまし|国税庁).

基本的には「総合課税」

国税庁の説明

「総合課税制度」における所得税額は「累進課税」

所得税額の計算方法を下図に示します (参考:所得税のしくみ|国税庁).オレンジ色の部分が所得税額となります.
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ここで,図中の

(所得税額) = [(総所得金額) - (所得控除の合計額)] × (所得税の速算表の税率) - (所得税の速算表の控除額)

は以下の速算表の値を用いて計算できます.

速算表を見ればわかるように,総合課税制度で計算される所得税は「累進課税」となっています.
従って,総合課税制度が適用される「雑所得」が増えると,どんどん税率が増えていきます.
また,給与所得も合算されて課税金額が決定されるので,働きながら投資する人にとっては更に厄介です.


所得税の速算表

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円


「1年目で大きな利益をあげ,2年目で(税金を納める前に)収める税金以上の損失を出した場合」に,税金が払えなくなってしまう可能性があることにも注意しましょう.

他の投資対象の税金は?

以下のように,総合課税の雑所得とは異なり,一律で税率が定まります.
また,「申告分離課税」のため給与所得と合算されて税率が変わることもありません.

したがって,基本的には株式やFXの方が税制上有利になります.

取引内容 所得 税率
上場株式 上場株式等に係る
譲渡所得等
No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)|国税庁
  • 申告分離課
  • 税所得税15%, 住民税5%
FX 先物取引に係る
雑所得等
No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係|国税庁
  • 申告分離課税
  • 所得税15%, 住民税5%

参考文献

  • 図解・表解 確定申告書の記載チェックポイント(平成30年3月15日締切分)
    他の税金も含め,詳しく知りたい場合は以下がオススメです.
    手頃な値段で,詳しい内容なので,手元においてじっくり調べるのに最適です.
    各事項について,表やチャートによりわかりやすい分類がされています.
    (但し,出版が10月ということもあり,仮想通貨については記載がありません.)

    住民税についても記載があります.特に「所得税の確定申告との相違点」は役に立つと思います.

  • ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金篇 2016
    投資をする上での「税金」については,以下がわかりやすいです.
    2016年度時点の内容なので,変更点だけ他書でおさえれば良いでしょう.
  • 日経マネー2018年3月号
    ビットコインの税金に関するQ&A記事が掲載されています.

    • 2017/6/30以前に購入したビットコインには消費税がかかる点に注意する必要がある.
    • 事業所得として申告できる条件.

    など,参考になる内容です.

    日経マネー 2018年 3 月号

    日経マネー 2018年 3 月号

    • 発売日: 2018/01/20
    • メディア: 雑誌