次の金融危機への警告〜リーマン・ショックから10年

著名投資家による,次の金融危機への警告についてまとめました.

リーマン・ブラザーズが2008年9月15日に経営破綻してから10年が経過しました.金融危機が約10年周期で起きていることから,次の金融危機を警戒する記事や動画も多く見られます.例えば,日本経済新聞がYoutubeで今年公開した動画を見つけました:
www.youtube.com

そして,今年に入ってからは著名投資家の懸念も報じられています.

著名投資家といえども金融危機を正確に予測することは不可能であり,彼らの予想を鵜呑みにすることが望ましいとは思いません.しかし,現在の経済が抱える問題点を知る上ではとても役に立ちます.

ジョージ・ソロスの警告

著名投資家ジョージ・ソロスは,大規模な金融危機へ向かっている可能性を指摘しています(2018/05/30).

A surging dollar and a capital flight from emerging markets may lead to another “major” financial crisis
Soros Sees New Global Financial Crisis Brewing, EU Under Threat
(和文:ソロス氏警告、世界は新たな金融危機に近づいている-EU存続脅かす - Bloomberg

つまり,ソロスは金融危機の引き金になるものとして

  • ドルの上昇
  • 新興市場からの資本逃避

を考えています.

この指摘は,以前から金融緩和とセットで語られてきました.金融緩和によって新興国に流れたマネーが,金融引き締めによって新興国から逆流することで,新興国経済に悪影響を及ぼすという考えです.その具体的なメカニズムを説明する例として,以下の記事(2018/5/10)を引用します:


通常は経常赤字を海外からの投資マネーでファイナンスしているが、米国の金利が上昇すると、新興国から米国へ資本が流出し、新興国では通貨安が進む。通貨安が続くと輸入物価が上昇し、インフレが一段と加速、景気を腰折れさせるリスクが高まる。また、これがさらなる通貨安を生む。通貨安によって、外貨建て対外債務の返済が困難になり、債務危機に陥る恐れも浮上する。
コラム:「新興国通貨ショック」は近いのか=尾河眞樹氏 | ロイター

レイ・ダリオの警告

ヘッジファンドを運営するレイ・ダリオは,米国の景気後退・金融危機が2年後に訪れると予想しています(2018/09/13).

“Two years out is when I’m worried about,” said Dalio. “It’ll be more of a dollar crisis than a debt crisis, and I think it’ll be more of a political and social crisis.”
Dalio Says U.S. Two Years From Downturn
(和文:ダリオ氏:2年後の米経済下降を予想、次の危機はドルが主役に - Bloomberg

レイ・ダリオが懸念しているのは,

  • 米国政府が財政赤字の拡大により国債を発行することで,ドルが下落すること.

です.但し,ドルは30%下落する可能性はあるものの,景気後退は2008年の後ほどひどいものではないだろうとしています.また,2年後が心配だと言っているように,現在のところはそれほど心配していないとのことです.

ちなみに,米国政府の財政悪化によるドル安は日経新聞でも指摘されていました(2018/4/10):


米連邦政府の財政悪化は金融資本市場の重荷となる。連邦政府債務(民間保有分)は17年度の14兆6650億ドルから20年度には20兆ドルを突破。28年度には28兆ドルを超え、国内総生産(GDP)比96%まで膨らむと試算した。先行きは米国債の消化が難しくなって長期金利が上昇するリスクがあり、ドル安など世界市場の波乱要素になる。
米財政赤字、20年に1兆ドル突破 議会試算、政権とズレ :日本経済新聞

また,最近も米国債の発行が増加したことが報じられています(2018/08/06)が,今のところ市場で問題なく消費できると見られています:
jp.reuters.com


ダリオは次の景気後退が起こった際にも気にすべき点があるとしています:


Two things in particular concern Dalio about the next downturn: Inequality in America will generate greater internal conflict than the 2008 collapse. Plus, policy makers have less room to respond, because interest rates are still historically low and because regulations have limited their authority.
Dalio Says U.S. Two Years From Downturn

つまり,

  • 米国における不平等が2008年の危機のときよりも大きな問題を起こすだろうこと.
  • 歴史的に見ると,すでに金利が十分低いことから,利下げによる対応余地が少ないこと.

を案じていることがわかります.



ダリオの根本にある考えをわかりやすく解説した動画があるので,ぜひ見てください:
www.youtube.com
logmi.jp